公認会計士又は監査法人に対する請求

公認会計士又は監査法人に対する請求とは

有価証券報告書の重要な事項に虚偽記載等がある場合、株主(又は元株主)は、当該有価証券報告書に監査証明をした公認会計士又は監査法人に対して、株主損害賠償請求をすることができます。
株主損害賠償請求訴訟において主張する法的根拠は、主に金融商品取引法(金商法)の規定に基づく損害賠償請求と不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求の2つです。

金商法に基づく損害賠償訴訟

次の要件を充たす場合、有価証券報告書に監査証明をした公認会計士又は監査法人に損害賠償責任が成立します。

  • (あ)有価証券報告書の重要事項に虚偽記載が存在し、又は記載すべき重要事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が存在しないこと(虚偽記載等)
  • (い)虚偽記載等のある有価証券報告書が公衆縦覧されている間に流通市場で当該有価証券を取得したこと
  • (う)虚偽記載等によって損害が発生したこと
  • (え)当該有価証券取得者が取得の申込みの際虚偽記載等を知らなかったこと

金商法に基づく場合、会社は無過失責任を負うのに対し、公認会計士又は監査法人については過失の立証責任が転換されているに留まり、公認会計士又は監査法人が、監査証明をしたことについて故意又は過失がなかったことを証明した場合には免責されます。公認会計士又は監査法人によるかかる立証は困難であるため、立証責任が転換されていることも原告株主にとっては大きなメリットとなります。しかし、公認会計士又は監査法人が無過失の立証のために多数の証人の尋問を申請し、訴訟が長引く可能性があります。

要件(う)について、会社を被告とする場合と異なり、損害額の推定規定を援用することができません。要件(う)の詳細については、損害額の考え方をご参照下さい。

なお、一般に、有価証券報告書等の虚偽記載等が明らかになり、株価が下がった後に当該株式を取得した株主については、虚偽記載等を知っていたものとして(え)の要件を充足しないと判断されますので、損害賠償を請求することはできないと考えられます。

不法行為に基づく損害賠償請求

ある行為によって他人に損害を生じさせた場合、当該行為者には、原則としてその損害を賠償する責任が生じます(民法709条)。これを不法行為責任といい、例えば、交通事故の被害者が加害者に対して損害賠償請求をする場合も、これを法的根拠とします。有価証券報告書の虚偽記載等により損害を被った株主も、この不法行為に基づき損害賠償請求ができるものと考えられています。

一般に、不法行為責任が成立するための要件は、以下のとおりです。

  • (あ)加害者に故意または過失があること
  • (い)権利侵害または法律上保護される利益の侵害(違法性)があること
  • (う)損害が発生したこと
  • (え)加害行為と損害との間に因果関係があること

公認会計士又は監査法人に対する訴訟では、(あ)の要件(加害者に故意または過失があること)を立証するにつき、公認会計士又は監査法人が監査証明をした際の状況、資料等がポイントとなるものと考えられます。

また、有価証券報告書等の虚偽記載等が明らかになり、株価が下がった後に当該株式を取得した株主については、虚偽記載等と損害との間に因果関係がないとして、(え)の要件を充足しないと判断されると考えられますので、損害賠償を請求することは極めて困難です。

なお、要件(う)の詳細については、損害額の考え方をご参照下さい。