
1.西武鉄道事件最高裁判決(平成23年9月13日最高裁第三小法廷判決)
西武鉄道株式会社(以下、「西武」といいます。)が有価証券報告書等の中で、株式会社コクド(以下、「コクド」といいます。)が所有する株式の数を過小に見せる虚偽の記載を行い、後にこれが公表され、西武株式は上場廃止となり、同社株式の価格が急落しました。
これによって、当該虚偽記載の公表前に西武株式を取得した株主が、西武と、当該虚偽記載に積極的に関与したコクド(後にコクドを吸収合併した株式会社プリンスホテル)に対し、不法行為(民法第709条、第719条第1項前段)に基づき、西武の役員らに対し、不法行為または旧証券取引法の規定に基づき、損害賠償を求めました。
*本件は、証券取引法等の一部を改正する法律(平成16年法律第97号)により、虚偽記載等のある有価証券報告書を提出した会社の株主に対する損害賠償義務及び損害額の推定規定(現在の金商法第21条の2)が施行される前の事件です。

取得価額と事実審の口頭弁論終結時の株式の市場価額(上場が廃止された場合にはその非上場株式としての評価額)の差額を基礎として
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当該虚偽記載に起因しない市場価額の下落分(経済情勢、市場動向、会社の業績等)を控除して、損害額を算定すべきであると判断しました。
2.ライブドア事件最高裁判決(平成24年3月13日最高裁第三小法廷判決)
株式会社ライブドアホールディングズ(以下、「ライブドア」といいます。)が、有価証券報告書の中で、経常利益を過大に見せる等の記載を行い、後にこれが公表され、同社株式の価格が急落しました。
これによって、当該虚偽記載の公表前に同社株式を取得した株主が、同社に対し、金商法21条の2第1項に基づき、損害賠償を求めました。また、損害額については、同条第2項(虚偽記載の公表の前後のそれぞれ1か月間の市場価額の平均額の差額を損害額と推定する)の推定規定の援用も主張されました。

検察官が、司法記者クラブに加盟する報道機関の記者らに対し、有価証券報告書に虚偽記載の容疑がある旨を伝達した時点と認定。
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そのうえで虚偽記載公表後の株価下落原因として、
・東京地検特捜部の家宅捜索がなされたという報道
・上場廃止の可能性を示唆する報道
・証券会社による株式のゼロ評価の表明
・東証会長兼社長による上場廃止可能性の示唆
・経営陣の逮捕
・株式の監理ポストへの割当て決定
・代表取締役の解任等
これらの事情は、大規模な粉飾決算を企図した本件有価証券報告書の虚偽記載の発覚によって通常予想される事態であるから、これらの事情による値下がりは、虚偽記載と相当因果関係があるものとし、これらの事情による値下がりを理由に、金商法第21条の2第5項により賠償責任が免除される「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下がり以外の事情により生じた」損害額を認定することは許されないとしました。
そのうえで、本件虚偽記載そのものではない、既に買収済みであった会社を株式交換により完全子会社化したとライブドアが虚偽の事実を公表したとの報道による値下がり分について、同条項により、同条第2項による推定損害額から1割減額した損害額を認定した原審の判断を、裁量の範囲内にあるものとして是認し、この限度で請求を認容しました。